音楽ファイル再生の先駆者、英国メリディアンから

DSD / DXD / MQA再生対応のハイエンド・DAコンバーター

ULTRA DACが日本上陸。


“アナログ”のクオリティにこだわり抜いたMERIDIAN究極のDAコンバーター

山本敦

CDからハイレゾへ、オーディオソースのトレンドが移行した今も先進的なプロダクトを発表し続けている英国メリディアン。そして遂に待望の超弩級DAコンバーターが国内で発売される。「ULTRA DAC」というプロダクトネームからも、メリディアンが本機にかける強い意気込みと自信が伝わってくる。その全貌を詳しくみていこう。

 

ULTRA DACはリニアPCMにDXD、DSD、そしてMQAとマルチソースのデコードに対応するD/Aコンバーターだ。あらゆるオーディオソースを高品位にDA変換しながら上質なサウンドを楽しめるように多種多彩な入出力インターフェースを備えた。USB経由では最大384kHz/24bitまでのリニアPCMとDXDファイルのほか、DoP方式によるDSD128/DSD64までのハイレゾ入力に対応した。

 

もちろんMQAコンテンツについてもメリディアンの最高級D/Aコンバーターとして、最高384kHz/24bitまでに対応する万全の構えで臨む。さらにMQA対応のプラグインを追加したPro ToolsやPyramixなどスタジオ用のデジタルオーディオワークステーションに接続して、より高性能なMQAファイルのデコード出力などを実現する「スタジオモード」が来年のアップデートで追加される予定だ。

 

 

その他のデジタル入力は同軸、BNC、AES/EBU、そしてメリディアン独自のSpeakerlink経由の入力では192kHz/24bitのリニアPCMソースのほか、DoPによるDSD64までのネイティブ対応とする。光デジタル入力では96kHz/24bitのリニアPCMをサポートした。さらにLAN端子により、ホームネットワークにつないだNASに保存した音楽ファイルの再生が楽しめるSooloos(スールース)のエンドポイントとしても利用ができる。またSooloos開発者が作った話題の音楽再生ソフトroonでの再生も快適に楽しむことができる。

 

豊富なデジタル入力を設けながら、一方でオーディオ出力はバランス(XLR)とアンバランス(RCA)の各端子を1ペアのみ備え、ピュアなアナログ出力に徹底してこだわる姿勢を強くうかがわせる。他のメリディアンのソース機器Sooloosなどのデジタル接続を実現する独自のSpeakerlink入力も1系統備えている。

 

 

開発者:ボブ・スチュアート
開発者:ボブ・スチュアート

 

ULTRA DACのコンセプトを起案し、開発から細部の設計まで指揮をとった現MQAのチェアマン兼CTOであるボブ・スチュアート氏は、「オーディオ・ファイルの皆様が、それぞれ大切にしているシステムにULTRA DACを組み込んで、最高品質のサウンドを楽しんでもらえるように、汎用性の高い入力インターフェースと上質なアナログ信号出力のクオリティにのみこだわりました」と、本機のコンセプトを説いている。

 

 

入力された音楽ソースはメリディアン独自のFIFOバッファメモリーにより、ジッターノイズを0.5Hz以下にまで低減する超高精度クロック基板を経てDAコンバーター部に送られる。筐体内部は左右チャンネルそれぞれに独立した基板を設けた「Dual Mono DACカード」構造としたほか、トロイダルトランスを採用したリニアパワーサプライや低インピーダンス化を図った8層構成の回路基板の採用など、忠実なアナログ再生のために贅を尽くした。

 

192kHzとMQAの応答性能の比較。数マイクロ秒の時間差を人間は察知するが、192k再生時(赤線)でもインパルス音の起点0sより前後の約250μ秒にプリエコー、ポストエコーと呼ばれる音の滲みが観察される。
192kHzとMQAの応答性能の比較。数マイクロ秒の時間差を人間は察知するが、192k再生時(赤線)でもインパルス音の起点0sより前後の約250μ秒にプリエコー、ポストエコーと呼ばれる音の滲みが観察される。

 

 

 

CDリッピングやネットワーク経由による音楽配信コンテンツまで、あらゆる音楽ソースをより高品位に楽しめるよう、ULTRA DACにはメリディアンによる最先端のアップサンプリングとデジタルフィルターの技術が搭載されている。中でも「Hierarchical Converter Technology」は、メリディアンが提案したMQAのコンセプトをベースにした最新の特許技術だ。

 

左右チャンネルの独立基板にそれぞれ搭載する複数のDACチップを組み合わせた高速処理をベースに、リニアPCM信号を変換する際に生じる「量子化ノイズ」と、人間の聴覚が敏感に認識する「時間精度のブレ」、音の“滲み”につながるプリエコー・ポストエコーを飛躍的に抑える革新的な技術だ。これによりULTRA DACは既存のDAコンバーターと比べてケタ違いにピュアで、歪みのない立体感に富んだサウンドを実現させることができた。

 

アップサンプリング時のデジタルフィルターも新規開発。ショート/ミディアム/ロングの3種類がそれぞれの効果を発揮する。またDSD再生時にも独自のマルチビットモジュレーターを採用して、応答性能を高めた。  本体には高剛性でノイズシールドを徹底したアルミのダブルシャーシを採用。グロスブラックの精悍なフロントパネルに設けられたLEDパネルにまで静音設計を徹底的に追求している。

 

少し前に本国で登場したプリアンプ「818 v3」やCDプレーヤー「808 v6」と同様に、英国ケンブリッジのメリディアン本社工場で一台ずつ丁寧にハンドメイドによって作られる、クラフツマンシップあふれるプロダクトの美しいアナログサウンドを心ゆくまで楽しみたい。

 

2017 Atsushi Yamamoto